2016年10月1日土曜日

第五回 レビュー企画 点から線へ ーー第二回実行委員長、玉木青


はじめに
京都学生演劇祭2016が先日終演した。多くの人との出会い/交流は小生にとって価値あるもので、演劇祭を支えてくれたすべての人に感謝しつつ、この価値あるイベントが今後も継続されるためにレビュー企画はある。小生の怠惰のなすところにより、前回から期間を大きく空けたことについてここでお詫び申し上げたい。
    本企画の予定としては、2月に開催される全国学生演劇祭までに、この企画の終了と「理念の設定(明文化)」といった次段階への移行を目指す。
    第五回は玉木青氏。京都学生演劇祭2012の実行委員長である。点から線をつくる営みの困難さは当時既に認識下にあった。2016年、我々が直面する問題の始原を振り返っていこう。

点から線へーーー継続的な活動の障壁

 京都学生演劇祭は初めから継続的な開催を志向していた。だが、このことには障壁があった。すなわち、学生が学生である期間は限定されており、年を越えた継続的な活動はことは困難である。そうなると必然的に発起人、沢が担う部分は多くなる。玉木は、第二回の京都学生演劇祭の実行委員会で前年を知る数少ない学生の一人であった。現在も、前年度から継続して運営に携わる者はごく少数である。
 第二回は、「マニュアルというほどのものではないが、第三回に向けて引き継げるものをつくろうという問題意識は存在していた。」レビュー企画につながる問題意識は第二回には既に生まれていたのである。そして、引き継げる体制を整備するための方策として「サークル化」が挙げられていた。
 演劇祭の実行委員会は、開催後は解散状態となり限られた委員と沢が次年度への引継を行い、繋がれてきた。活動拠点と呼べる場所はなく、前年の開催から次年の開催までは宙吊りの空白期間となる。開催の熱気もここで冷え込んでしまう。
     京都大学には11月祭を運営するサークルがある。文化祭を運営するサークルは多くの大学にある。先例も多い中で、サークルのような組織として活動していくことで、引継などで、宙づりにされることもなくなるのではないか。だが、この問題意識は問題意識に留まり、実行されることも以降議論が深まることもなかった。
 年に一度のイベントだけではモチベーションを保つことが困難である。演劇祭終演後にも活動を継続する企画を立て、実行する必要があるだろう。このことについては、合田団地氏へのインタビューで新たな可能性が見いだせたので、氏の回に譲ることにする。
 玉木は京都大学を拠点に活動する劇団愉快犯の創立メンバーの一人である。創立で培ったものを活かして、演劇祭を長として率いた。より正確に言えば、創立で培ったものしかなかったといってもいい。だが、それは玉木に限ったことではない。沢も玉木も、誰もが限られた情報、技術からどうにかして、やっていく他ないのである。だからこそ、後代に残るものを少しでも増やしていく不断の努力が必要なのである。


京都学生演劇祭を支えるスタッフ

 演劇祭のようなイベントには、運営だけでなく設営等を担うテクニカルスタッフの存在が必要不可欠である。第2回も手探りの部分が多かったという。当時も今も、テクニカル面でのスタッフに関して運営にとってのストレスは殆どないといって差し支えないだろう。複数の団体それも普段は大学の施設を独自に受け継がれた方法で使用する団体が、一つの劇場に集まり、上演することの困難を乗り越えられてきたのは、実は舞台監督、照明統括、音響統括といった経験あるテクニカルスタッフの支えがあってこそのものである。彼らの中には第1回から今年の6回目まで演劇祭に関わり続けている者もいる。彼らの担う役割は特殊なものであり、沢と同様に他の誰かに容易に代行できる役割ではない。玉木は「奇跡的な人材に支えられて成り立っているところがある」という。
 テクニカルスタッフについて、学生で補うことはできないかという議論があった。だが、それは全く現実的ではない。テクニカルスタッフは安全面に関わるところがあり、軽視すれば取り返しの付かない事態も想定できる。それでも、京都学生演劇祭2016では少しでも学生で補うことができるよう当日の音響・照明の管理は学生で賄うことになった。これには予算を抑えるという側面もあるが、それ以上に学生が担う幅をできる限り増やすべきであるという運営の方針もあってのことであった。テクニカルスタッフが軸を固め、学生でも担える部分は学生が担うというのが現状である。
 演劇祭におけるテクニカルスタッフの現状はベストかと言えば、ベストとは言い切れないところがある。具体的個人に依存することのリスクは無視できない。「その人」が何らかの事情でいなくなった事態の対応が難しくなるからである。沢の存在同様に、具体的個人に依存するよりはある程度システム化しておく必要があると玉木は言う。受注する側にしっかりしたものがあれば、このリスクは軽減できる。つまり、「何をしてもらいたいのか」を明示できる体制を構築する必要がある。
 参加団体、実行委員会、テクニカルスタッフなど演劇祭は多くの人が様々な仕方で関わっている。沢を筆頭に、年次毎に入れ替わる学生たちによって混沌の中で運営されてきた。今回のインタビューでは運営についてそれもかなり実務的な問題が俎上に載った。実行委員会はすべてを統括する立場として、テクニカルスタッフのあり方についても見つめ直す必要があるだろう。


玉木青
Twitter @tamakisei
1991年、京都市・岩倉生まれ。2010年、京都大学在学中に劇団愉快犯を設立。京都学生演劇祭、『水曜どうでしょう』ディレクター陣による講演会などを企画・運営。出版社勤務を経て企画編集、執筆、地域活性、文化創造のための居場所、イベントづくりに参画する。10月22日、23日に元・立誠小学校にてショーケースイベント「よろしくご笑覧ください」開催予定。

<京都学生演劇祭2016より読者の皆様へ>
 レビュー企画では、京都学生演劇祭に過去に参加した経験のある方のインタビューや寄稿を募集しています。一人でも多くの方にご意見・お話をお伺いしたく、是非ともご協力をお願いいたします。

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タイトルに「レビュー企画(お名前)」と明記願います。


京都学生演劇祭企画スタッフ
劇団なかゆび主宰
神田真直

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